2021年8月27日(金)からインターネット予約経由、9月1日(水)から販売店窓口・予約特設会場でそれぞれ予約が行われた、こまきプレミアム商品券。
小牧市内の在住者様におかれましては、お申し込み・ご購入された方もあろうかと思います。
今回の記事では、令和3年度のこまきプレミアム商品券発行に際して、試験的に一部の申込用紙について行ったAI-OCRによるデータ読み取りの取り組みをご紹介いたします。
後々に社内システムやRPAなどとの連携の障壁が低くなるというメリットがあるAI-OCRにご関心を持たれている方向けに、一つの事例として情報を共有させていただこうという趣旨です。
今回のこの小牧商工会議所の取り組みに関しては、担当部門である会員サービス課の担当者から話を伺いました。
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令和3年度こまきプレミアム商品券の概要
小牧商工会議所が行ったAI-OCRへの取り組みのご紹介の前に、令和3年度(2021年度)のこまきプレミアム商品券の概要についてご説明いたします。
こまきプレミアム商品券とは
こまきプレミアム商品券は小牧市民の生活支援、地域や中小商店の活性化等を主な目的として市民を対象に発行され、市内の加盟店で使うことができる商品券です。
1枚500円の商品券24枚(12,000円分)を1セットとし、これを10,000円で販売することで同券購入者が、20%(2,000円)相当のプレミアム額を得られるというもの。
購入に際しては1人最大5セットまでの上限、小牧市民限定であるほか諸々のルールが存在します。
購入の細則やその他最新情報については、下記URLリンク=小牧市公式ホームページ内コンテンツ「令和3年度頑張る小牧の応援券(こまきプレミアム商品券)について」(上)と、小牧ナビの「こまきプレミアム商品券について」(下)をご参照ください。
商品券発行にまつわる旧来からの課題
小牧商工会議所に限らず、日本全国いずれの自治体や関連機関においてもプレミアム商品券を発行にまつわる、旧来からの課題がありました。
それは文字入力(=データ入力)にまつわる省力化と効率化の課題です。
申込情報の入力作業の省力化と効率化
主に手書き申込書の場合ですが、アナログの申込情報のデジタルデータへの置き換えには、下記の工程が必要となります。
大量の文書の文字入力を行った経験がある方ならお分かりのことと思いますが、人が主にキーボードで行う入力においては少なからず入力ミスが発生します。
これに抗じるために入力結果に対して目視による確認を行いますが、ここからの修正作業や僅かながらも確認段階での見逃しが発生してしまうこともあります。
そして、さらにいえば何重かの追加チェックも行うのですが、ここの手間も決して軽微なものではありません。
こういった無駄、トラブルなどを避けるための技術・手法がOCRやAI-OCRです。
AI-OCRの概要
OCRなら聞いたことはあるが、AI-OCR(Artificial Intelligent OCR)という言葉は耳慣れない、という方は少なくないことと思います。
AI-OCRという言葉が広く普及しているとも言えないので、OCRについてのかんたんなご説明と2つの違いについてご紹介します。
OCRと手書きの文字について
OCR(Optical Character RecognitionまたはReader)は、画像データのテキスト箇所を認識して文字データへ変換する光学文字認識機能を指します。
具体的には、紙の手書きの文書を光学スキャナーで読み込んで、デジタルデータ化する技術全体を指しています。
OCR登場以前には、人間が目から読み取った情報を脳内で変換・文字化してデジタルデータとして入力していきましたが、この際に前述のごとく人の手間が少なからずかかっていました。
OCRは、この「読み取り / 文字変換 / データ化」の部分を光学的・機械的に処理してくれます。
AI-OCRとは
ただ、すでにご存知のように文字通り機械的なOCRの多くは、保持する読み取りロジック(≒パターン識別)の範囲内でしか判別・識別を行うことができませんでした。
AI-OCRは冠があるように、OCRにAI(Artificial Intelligence=人工知能)技術を組み合わせ、AI側にディープラーニングさせることで、機械学習による文字認識率を向上させています。
一例をあげれば、帳票フォーマットの設計なしに項目抽出がAI-OCRの読み取りによって可能になります。
またここから敷衍して、業務システムとの連携面での効率が向上することも見込まれています。
AI-OCRについては、株式会社NTTデータ様Webサイト内の下記リンクにおいて、より詳しい説明が成されています。よろしければご参照ください。
小牧商工会議所が試験的に行ったのは、このAI-OCRを利用した上でのプレミアム商品券の一部の入力情報デジタル化でした。
以下にその取り組みの概要をご紹介いたします。
プレミアム商品券発行効率化への取り組み
プレミアム商品券については、先述のように合計で12万セットの商品券の処理を不特定の申込から当選者にお届けするというミッションを、ごく短期間で行わなければいけません。
小牧商工会議所は、この処理にかかる人や時間のリソースの縮減、将来的な全面導入・入力作業の全自動化を見据えて、AI-OCRによる申込書の手書き文字情報読み取りを試験的に行うこととしました。
AI-OCRの実調査を行う上での課題と解決策
こまきプレミアム商品券の予約方法は、Web経由の予約と窓口予約があります。
Web経由の予約分に関しては、デジタルデータで申込者の情報がそのまま管理システムへ受け渡されるので問題ありません。
しかし一方の窓口予約分については、紙の申込用紙に手書きしたものをスタッフが同システムへ入力して、その入力内容を別途確認していくことになります。
課題は、この入力と確認の工程を自動化したいというものです。
AI-OCRの実調査趣旨は、上記のようになります。
小牧市役所が使用するAI-OCR機器を一時利用
実際にAI-OCRの検証を行う上でハードウエア=機器が必要になりますが、高価なものでもあり現在のところ小牧商工会議所では所有していません。
そのため、小牧市役所でレンタル機器を利用しているAI-OCR機器を一時的に利用し、検証に充てることとしました。
小牧市役所では、令和元年から業務の効率化を目的にRPAに実証実験の一環として、AI-OCRの実用化に取り組んでいます。
具体的に実施したこと
具体的に実施したことを一覧化すると、下記のようになります。
AI-OCRの処理対象
商品券購入申込の初日予約分(約6000枚)のうち100枚 ※全体の約1.6%相当
実施スケジュール
商工会議所から小牧市へ読み取り対象データを提出
実態的には、商工会議所が手書きの申込書をスキャンして、USBメモリを介して提出。
工程は1-2稼働日程度。
小牧市から商工会議所へデータを差し戻す
小牧市がスキャンデータをCSV化して、商工会議所へ返却。
商工会議所から管理システムへデータ移管
CSV化されたデータを商品券情報の管理システムへ移管・反映。
AI-OCRの構成
・ハードウエア 富士ゼロックス製 DocuCentre-IV C5575(光学スキャナ)
・ソフトウエア AI Inside製 DX Suite
・その他機器材 Windowsパソコン数台
AI-OCR処理の実施結果
100枚 1,159セットについて実施
プレミアム商品券のAI-OCR処理に関する総括
小牧商工会議所が取りまとめた、商品券のAI-OCR処理の総括をご紹介します。
1) 商品券の実発行まで、想定をやや上回る期間を要する
2) AI-OCRで読み取りやすい形式にしてはいるが、手書き申込書には限界があるかも
3) 作業時間が「窓口申込書の入力<AI-OCR読み取り修正作業」になってしまっている
次回以降の同様な施策への活用を見込む
小牧商工会議所では、今年度の実証結果を次回以降の同様な取り組みへの知見としていきたい意向です。
AI-OCRについては今後も、事業所サービスや市民サービスの向上とともに、業務の効率化を図る上で活用が見込まれます。
今回のコンテンツでは小牧市、小牧商工会議所の新たなDXへの取り組みの一つとしてご紹介させていただきました。
取材協力:小牧商工会議所
※AI-OCRの実証実験の俎上に載せた分については、最終的には他の申込書と同様な最終確認を行い、正規の手続きに基づいて処理させていただいております
(スクリプト: こまき新産業振興センター)
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