建設現場におけるデジタル化の推進:可児建設株式会社の事例 ~ICT導入による測量業務の効率化 - 働き方改革 - ~
建設業界では、高齢化による人手不足や長時間労働が深刻化しており、生産性向上と働き方改革が喫緊の課題となっています。こうした中、ICT(情報通信技術)を活用した建設現場のデジタル化が注目されています。
可児建設株式会社は愛知県小牧市に拠点を置く建設会社です。同社は、平成26年10月から現場にICTを導入し、業務の効率化と働き方改革に取り組んできました。本稿では、同社の事例を通してデジタル化のメリットと課題、そして今後の展望について考察します。
従来の測量業務の課題
同社では、以前は2人1組で測量作業を行っていました。しかし、近年の人手不足により、1人で複数の現場を担当するケースが増加。測量作業を行う際には、作業時間の調整や人材確保に苦労していました。また、測量データは紙ベースで管理していたため、データの転記や共有に手間がかかり、ミスが発生しやすい状況でした。
可児建設のICT導入による効率化
同社は、これらの課題を解決するために、国土交通省が推進するICT施工にいち早く取り組みました。具体的には、以下のツールを導入しました。
可児建設が導入したICTツール
• 杭ナビ: 今回中小企業デジタル化支援補助金を利用して導入したシステム。
以下は既に導入済みのツール。
• クラウドサービス: データをクラウド上で共有することで、社内での情報共有をスムーズ化。
• 電子納品: 書類の電子化により、ペーパーレス化を実現。
• ドローン: 広範囲の測量を効率的に行うことが可能。
• 3次元CAD: 構造物の設計や施工計画を3次元で可視化し、関係者間での情報共有を促進。
• 遠隔臨場: 映像を活用した情報化施工による映像CIM。
これらの導入により、測量作業の効率化と働き方改革が進みました。具体的には、以下の効果が得られました。
• 作業時間の短縮: 従来の測量に比べて作業時間は半分以下。
• 工数の削減: 従来の測量に比べて工数は3分の1以下。
• 人材の有効活用: 1人で測量作業が行えるようになったため別の業務が可能に。
• ミスの削減: データの電子化により、転記ミスや情報の食い違いを削減。
• 情報共有の促進: クラウドサービスの活用により、情報共有がスムーズに。
• 働き方改革: 残業時間の削減や休日出勤の減少。
• ネットワークカメラの活用: 移動距離、回数、人数の削減。

杭ナビの端末側の画面

杭ナビLN-150
可児建設のデジタル化に関する課題
ICT導入によるメリットは大きいものの、いくつかの課題も存在します。
• 初期投資: ツールの導入には、初期費用がかかります。
• 人材育成: ツールを使いこなすためには、従業員への教育が必要です。
• セキュリティ対策: データの電子化に伴い、セキュリティ対策の強化が必要です。
今後の展望
同社は、今後もICT導入を積極的に進め、さらなる生産性向上と働き方改革を目指します。具体的には、以下の取り組みを検討しています。
• 3次元CADの活用: 3次元CADの活用範囲を拡大し、より効率的な施工計画の立案を目指します。
• BIM/CIMの導入: BIM/CIM(Building Information Modeling/Construction Information Modeling[国交省によって提言された建設業務の効率化を目的とした取り組み])を導入し、建設プロジェクト全体の情報共有を促進します。
• AIの活用: AI(人工知能)を活用し、測量データの解析や施工計画の自動化などを目指します。
建設現場におけるICTツールの有効性を示す好例として
可児建設の事例は、建設現場におけるデジタル化の有効性を示す好例です。ICT導入により、測量業務の効率化と働き方改革を実現し、企業の競争力強化に繋げています。

社員の皆さん
コメント