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人材も可能性も千客万来の精神で
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高精度の転造加工製品を自動車・住宅・医療分野へ供給
ミャンマーはじめ外国人スタッフにも重要な役割を
先代から事業を受け継ぎ、商社からメーカーへ舵を切る
25歳の時に、創業者である父が亡くなり、急遽自分が社長として経営に携わることになりました。
それまでは、私より年上の中途採用の社員さんと、パートさんが中心の会社でした。
元々は商社だったので、モノを仕入れて売り、一方で現場での加工も行っていましたが、それではなかなか、会社としての色が出せません。
価格競争から自律価格が可能な自社製造の比重を高める
商社であれば仕入れ量が多いところが強いので、そこで競争すると薄利多売になってしまう。
では、自社で価格を決めるには?と考えた時に、やはり自社で製造しなければと思い当たりました。
そこで切り替えて、「うちはこれから、製造に荷重をかけて経営していこう」とシフトしたんです。
いきなり高単価の受注は難しいけれど、中単価の仕事が取れるようにと考えました。
そこで、今後のために、自社で人を育て、新卒者を入れてもやっていけるように体制を整えることにしました。
それでも当初は、お客さんから怒られることが多かったですね。
人材は正社員を中心にして、中単価な仕事を受注するとなると、断らなければいけない仕事や、取引をやめなくてはならないお客さんも出てきましたから。
正社員を中心とした製造業へ、スムーズにシフトできたわけではありませんが、新しいNC加工の設備に投資したことで、そこに付加価値を感じていただいたお客さんから、徐々に新規の仕事が増えるようになり、軌道に乗りました。
「喜びのパートナーシップ」を企業理念に
会社の理念や信条について
名友産商の企業理念は「喜びのパートナーシップ」です。
ネジは、ものを繋ぎ、ものの製造工程の間を担います。
これには、お客様をはじめ、仕事を通じて知り合った方々と協力し合い、技を磨き、お互いが感謝しあえるようにという、お客様と自社、そして社会の「三方善」の意味合いがあります。
お客様と「パートナーシップ」を築くわけですから、製造メーカーとして、他社に負けないプロフェッショナル集団でありたい。
製造業の新しい可能性を国内はもちろん海外にまでも発信できる、そんな会社にしたいと常に思っています。
ネジの転造加工でめざす “世界一小さくて高い山”
加工の精度を高め、お客さまそれぞれの、お困りごとや不具合を解決するため、小ロットで開発・生産する製品が多いことが特徴です。
他ではできない製品も多数手掛けています。
社員には自信や誇りを持ってほしいと思い、当社が得意とする転造ネジの山を実際の山になぞらえて『私たちがめざすのは、世界一小さくて高い山です』というキャッチコピーも作りました。
社員との関わり方について
かつては中途採用のみでしたが、15年前から新卒採用を始めました。
ものづくりをしていく上で、人が技術を覚えるためには時間がかかります。
そして製造業は、人とのコミュニケーションや話すことが苦手という、おとなしい人が多い。
当初、この新卒採用には苦戦しました。
20年くらい前のことですが、内定者には引きこもりの子などもいて、所管ハローワークさんからの紹介で入ったものの、昼食を食べたらいなくなったり、入社1週間で会社に来なくなったり。
毎朝、数名を自宅に迎えに行ってから仕事を始める状態でした。
複数の新卒採用で定着し始める
それでも製造現場に人は必要なので、中途の若者を採用するなどして、「一からやろう」と新卒対応に腰を据えたのは、15年ほど前からです。
40代後半から50代の社員さんの中に若者が入るので、定着が悪かったというのもあったと思います。
1人ずつではなく2、3人ずつ採用していくうちに辞める人が減り、ポツポツと定着し始めました。
海外からの技能実習生と日本の若者との仕事観共有を
やはり、40代や50代と、20代の仕事観は違うもの。
上は「見て覚えるものだ」と考え、下は「なぜ教えてくれないの?」と不満に思う。
それを融和させるためにも、技能実習生を採用して、彼女たちの働く意欲やハングリー精神を見てもらおうと思いました。
ベトナムの20代前半の子たちを採用するようになってから、15年ほどが経ちました。
人とコミュニケーションをとる機会が少ない製造業で、男性が中心の職場です。
技能実習生はあえて女性を採用して、働きながらコミュニケーション力も養ってもらおうと考えています。
採用した人たちには、まず内面を充実させながら、技術を身につけていってほしい。
いずれは、お客様に直接ご対応できるようになってほしいと思います。
また、技能実習生の採用には、純粋に「稼がなければいけない」と考える海外からの若者と、比較的のんびり育ってきた日本の若者の間で、仕事観を共有してほしいという目的もありました。
一人ひとりとのコミュニケーションを深める
そこで、朝礼や日報のやりとりなど、コミュニケーションの機会は多めに設定しています。
日報は1人1冊の教材を使って、週間や月間の目標、テーマを持って作業をしてもらいます。
そして本人が1日の振り返りを書いたものに、私が返事を書いています。
就労困難者へのケアと社会還元
当社では、留学生のインターンシップだけでなく、障がい者学校からのインターンシップや、引きこもりなどで就労困難の子も受け入れています。
名古屋市北区にある「なごや若者サポートステーション」と連携して、若者たちに会社を見学してもらい、頑張れそうな子には来てもらいます。
そういった子たちが、うちでの経験を経て、実際に社会で働けるようになればいいなと、地域へ還元する気持ちでお引き受けしています。
地域社会へ出られるようになるまでの間、なるべく居心地のいい空間づくりができるようにと心掛けています。
仕事に対する考え方が先にないと、人に作業を教えられないだけでなく、働く目的がわからなくなります。
制服の背中 「ありがとう」に込められたメッセージ
チームで協力し合うのが会社ですから、まず、働いている仲間に対してその気持ちがないと、お客さんにも感謝することができないと思います。
毎日の仕事の中で、「ありがとう」と感謝できる人に育てたい。そうでないといいモノづくりができませんから。
うちでは、新卒で入った子には、ご両親に、社会人になったことへのお礼の手紙を書かせ、初任給でのプレゼントも買いに行かせます。ここが最初の社会なので、それはしっかり教えてあげないといけない。
新卒者の親御さんにも、「内定が決まったら、3月までの間に、必ず会社に見学に来てください」と話しています。
「ありがとう」精神が社員間にもたらす影響
ベトナムからの技能実習生を受け入れる時も、現地のハノイで面接をして、その後家庭訪問をし、ご両親に挨拶することを続けています。
「ありがとう」の精神の理解という面では、技能実習生たちは、日本の若者の倍くらいできていると感じますね。
「両親にはお世話になったから」と、稼いだ15万円のうち12万円を家族に送金する子もいます。
そんな姿を見て、新卒採用した日本人の若者たちも、いい影響を受けています。
これからの中堅社員にリーダーシップを
かつて中途採用した人たちが50代や60代となり、これからは新卒採用した20代や30代が中心となります。
彼らがリーダーシップを取るように育ってくれたらと思います。
採用にあたり、面接の時に見えるのはその人のごく一部です。
色々な人がいると思いますが、縁あってうちに入っていただいたのですから、仕事をする中で考えを理解し成長していってほしいと思っています。
次世代のリーダーを育て、新たなビジョンへ
5年ほど前までであれば、自動車部品などの特徴的な製品があれば、それなりに業績を伸ばすことができたと思います。
でも現在は、海外生産が進んだり、車も買うのではなく借りる形式が広がったりと、市場が変化してきました。
今後はいろいろな要素を取り入れて対応していかなければなりません。
昨年から、外国人のエンジニアなど、少しずつ理系の人材を入れながら採用活動を進めています。知識が少しある人も増やしていければと考えています。
また、今春入社する技能実習生には、ベトナム人の男性がいますから、いずれはベトナムにも工場を持つなど、会社の可能性が広がるのではないかと思います。
10年後の立ち位置を見据えビジョンを見直す
当社は9月決算で、この新年度の新しい期10月から期が変わり、社員全体で経営計画を作成してビジョンを見直しました。
10年後、どんな会社になっていたら嬉しいかを考え、ではその中で自分はどうなっていればいいのか、どんな立ち位置にいるべきなのかを認識してもらいました。
皆が挙げた売上目標は高かったので、今後は実現のためにどうするかを考えていかなければなりません。
ただ、高い目標を掲げられるようになってきたのは嬉しいことだと思います。
今、会社にいる25歳から35歳くらいの子たちが、働き出して7年から10年になります。
その子たちに、次にうちの会社の取り回しをしてもらいたいと考えて、職長やグループリーダーを任せています。
いずれらは彼らに、僕が今やっているようなことをできるようになってもらいたい。現在はそういう教育をしている段階です。
高強度と精密な仕上がりのネジ転造(塑性)加工に特化
独自、あるいは得意とする分野は
1975年の創業時から、ネジの転造加工に特化しています。
転造加工とは、ダイスという金型を回転させながらネジ山形状をネジブランクに転写し、成形する塑性加工方法です。
熱を加えるプレス加工や素材を削る切削加工とは違い、圧縮させたものです。
これにより強度が増し、表面が美しく精密に仕上がります。
※ネジの転造については名友産商の下記Webページリンクの開設をご参照下さい
転造加工技術で自動車装飾部品/新分野からの引き合い
回転塑性加工が可能であれば、どんなものでも加工できることが特徴です。
昨今は部品の軽量化のため、アルミ素材のネジも需要があります。
現在は10アイテムほど、月間100万本のアルミ製ネジも転造加工で製造しています。
自動車の部品加工が主力業務ですが、中でも自動車の装飾部品の転造加工は、他社では取り組みがない技術と自負しています。
少し前に取引実績のない大手メーカーから、電気自動車のジョグダイヤルの装飾加工の依頼がありました。
UI(ユーザーインターフェース)となるコントローラー部分の加工です。
短期間に未経験分野の装飾加工品を試作
約1年という実験的な納期の中、求められているもののモデルがないまま実現の方策を模索しました。
直感的に触りたくなるコントローラーにするため、デザイン面を重視して試行錯誤を重ねました。
完成した試作の(立体的で波打つダイヤモンドのような)装飾加工を見ていただいたところ、依頼主から「本当にこんな加工ができるとは。それも、こんなに美しく仕上がるとは思っていなかった」と褒めていただきました。
協力メーカー開拓や加工技術の高度化など課題も
コストと量産体制の面で折り合わず、結果的には受注に至りませんでしたが、最初から「できません」と言わなかったことで自社の経験や選択肢が広がり、新たな可能性が開けました。
また、様々な協力メーカーさんを開拓する必要性や、内製の加工技術を高めることなど、今後の課題も見つかりました。
今は自動車の概念が変わってきている時代です。
どういったものがフィットするかは手探りですが、自分たちの力でお客様の想像を超えていきたいと考えています。
使われるシーンを伝え製品づくりに取り組む
製品造りに理念が生かされている部分
社員にはどのような製品がお客様から求められているかを考えて、気持ちのこもった対応をするように伝えています。
生産コストはもちろん大事ですが、安ければいいというものではありません。
作業者はお客様と直接向き合う機会があまりない上、まだ日本での生活経験が少ない海外からの若者もいます。
できる限り私から「この部品はどういった時に使われるか」というシーンを話しています。
住宅の窓、自動車部品など実際に使われる場面を想定
例えば加工するのが住宅の窓のサッシ関係のネジであればーー
”これは回転して開く扉のネジなので、日常の換気の場面で重要になる部品。 窓には小さなお子さんが近づくかもしれないので、不具合は許されない。”
自動車部品の加工であればーー
”万が一不具合があれば、ご家族の楽しいドライブが台無しになるかもしれない。 また、車で病院へ急ぐ人もいるかもしれない。”
このように実際に使われる場面、シチュエーションを伝えるようにしています。
従業員と共に喜び合える会社をつくることを目的に
1つ1つの加工は短時間で終わるとしても、そういったことを常に念頭に置いて作業して欲しいと、朝礼や日報などを通して伝えています。
父が急逝し、若くして事業を継いだ代表には、想像を絶する苦労があったと思います。
悩んだ末に、商売の目的とは何かを考えた代表は「従業員と共に喜び合える会社をつくる」という本来の目的を見つけました。
会社を大きくしようと思えばできるかもしれませんが、目的はそこではない。ものを造るならお客様に喜んでいただけるように。
そして、従業員と喜び合う。それが私たちの目的です。
名友産商のIoTとSDGsへの取り組み
始まりはIoT導入サポートのセミナー
IoTやSDGsの取り組みとこれからについて
当初は具体的にIoTをどう取り入れればいいかわからず、こまき新産業振興センターが開催したIoT導入サポートのセミナーに、数回に渡り参加しました。
また、社内の人材を生かすため、静岡大学で電子工学を学んだミャンマー人女性をIoTの担当に任命。
IoT機器を触る機会や、IoTを導入した企業さんの見学に同行などの機会を経て、まずは自分たちの中でイメージを醸成していきました。
そして自社製造工程にどのように落とし込めばいいのかを、同センターのアドバイザーさんに相談しながら、2020年に試験的に稼働しました。
IoTで進行状況把握が日報からリアルタイムに
現在は、現場に10台の機器を付けて、個々の作業の進行状況を表示しています。
転造加工では手と足を連動させて操作するような工程では、人により製造ペースにばらつきがで出やすい場合もあります。
これまでは、生産計画に対する遅れを、毎日の日報により結果で知る形でしたが、今はリアルタイムで作業の進捗が確認できるようになっています。
これにより無駄な時間がなくなり、各自の効率が上がってきたのを感じています。
2階にある事務所のモニターでも作業状況が見られるので、機械が止まるほかの不具合があった場合、私もすぐに現場へ駆けつけられるようになりました。
IoTの導入で感じる可能性
今後は「IoTでもっとできることがある」と可能性を感じています。
生産効率を上げることだけでなく、例えばIoTで金型を管理すれば、生産の経緯が明確になり、生産数の無駄を省くことができます。
また、データも手書きでなくデジタル化することで、お客様との商談も効率的になるだろうと考えています。
IoTをものづくりツールの一つに
当初は「IoT によって、1本造っていたネジが2本になるんですか?」などと懐疑的だった作業者にも、理解が広まりました。
最近では会議で「IoTからのデータによると…」という発言も聞かれるようになっています。
昨日より今日、今日より明日と、積み上げたデータで変化がわかるので、納得できたようです。
今後は条件や時間の工夫で、1本だったネジを2本造ることができるようになるかもしれません。
ものづくりのツールの一つとして、IoTをうまく取り入れ、商機につなげていきたいと思います。
SDGsへの取り組み
SDGsについても取り組みを始めています。
私たちは、お客様から材料を支給していただき、転造加工という付加価値を付けてお返ししています。
その材料にロスが生じるのは、環境面からも良いことではありません。
そこで、転造加工で削られた部分を再生品として利用してくれる材料業者さんを見つけました。
削り取っただけで不純物は混ざっていない材料は、買い取ってもらえばまた使うことができます。
また、加工に使った油も、再生油として利用していきます。
IoTもSDGsも三方善を提供する姿勢で
このスタイルに賛同してもらえるのなら、ぜひ同業他社さんにも取り入れていただきたいと思います。
環境問題に取り組む企業としてPRポイントにもなるのでは。
IoTもSDGsも、他人事のように遠巻きに見るのではなく、時流をキャッチして噛み砕き、飲み込む企業にならなければいけないと思います。
最初は大変でも、続けていくうちに当たり前になるはず。そしてそのうちに、未来が良い方向に進むのではないでしょうか。
私たちはこれからも、「三方善」を提供できるように、時代を追いかけていきたいと思います。
(インタビュー&スクリプト:倉畑桐子)
株式会社名友産商のプロファイル
会社所在地
小牧市小木東2丁目188番地
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代表者
代表取締役 南 竜一
【主要取扱品】
転造機械部品
【資本金】
1,000 万円
【従業員数】
40 名
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