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精密板金から戦闘機の修復プロジェクトまで幅広く対応
※下記企業Webサイトリンク
多様な金属加工に対応し一貫生産にも取り組む
株式会社セイコーは、昭和58年に私の父である社長が創業した板金加工会社で、現在従業員は11名です。
事業内容は、アルミやステンレス、鉄などの金属製品の切断やパイプなどの曲げ、溶接といった加工から、機械加工、建築金物の施工まで幅広く行っています。ですから、結果的に、複雑な加工を受注することが多くなりますね。
「飛燕」修復プロジェクトにも参加
技術に関しては、川崎重工業創立120周年記念展の際、旧日本陸軍戦闘機「飛燕」修復プロジェクトに参加した実績があり、これまで培った経験やノウハウ、対応力には自信があります。
※「飛燕」に関連する川崎重工創立120周年記念展の情報Webサイト
取引先のお客さまの業界も多岐にわたり、航空宇宙や車両などの精密板金から、建築金物、製缶などなんでもご対応しています。
職人の技術力と先端設備の導入により、いち早く一貫生産に取り組み、溶接や仕上げはもちろん、現場での施工も自社で行います。
表面処理以外、全て自社で行うというスタイルを30年以上続けています。
車両の架台に生かされる曲げ加工の技術
通常は鉄道車両などの精密板金や建築金物、パチンコ関連の金属製品の製造がメインですが、現在はキッチンカーの荷台の受注が増えています。
前方部のRが他社さんでは綺麗に曲げられず、折って加工されるところが多いのですが、線が入って見えるとカッコ悪いじゃないですか。
弊社ではパネルを綺麗にRに巻くことができ、鉄骨部とアルミの外枠も同様に綺麗に加工できるので商品価値が上がるとお客様に評価して頂いております。
キッチンカーの製作業社は当然他にも何社かありますが、弊社の製作するキッチンカーは仕上がりが綺麗と喜んで頂いております。
軽トラなどの車両を持ち込んでもらい、荷台の骨組みと外装を担当しています。
小ロット品の延長でモスクのドーム丸屋根にも対応
取り扱い製品としては、近年は小ロットのものやオリジナリティのあるものの注文が増えています。ホテルのロゴマークが入った真鍮製の製作物を当日対応で納品したこともあります。
サイズが大きいものであれば、名古屋駅前にある「名古屋モード学園」の名前が入った4mのステンレス看板を作ったことも。
また、津島市にある日本最大級のモスクのドーム型の丸屋根も弊社で作りました。
もちろんモスクの依頼は初めてでしたから、3DCADで図面を起こして対応しました。
株式会社セイコーが手掛けたモスクの紹介【マハマディア・ムスリム協会Webサイトリンク】
社長発案のコーナープロテクターはセントレアでも採用
特許を取得している「コーナープロテクター」は、社長の発明品で、傷つきやすい壁の出隅(壁の角)をガードするステンレス製のプロテクターです。
住宅でも店舗でも施設でも、壁紙の傷や破損は出隅で起こることが多いです。
ここをしっかり保護することで、壁全体の美しさを長く維持できます。
その品質と丈夫さ、後付け施工の容易さから、セントレア(中部国際空港)でも採用されているヒット商品で、自社のホームページでも販売しています。
腕とやる気がある職人達から持ち味を引き出す
従業員には、段取りや納期などの伝達のほか、「困ったら相談して」と声をかけるようにしています。
また、「本当にこれでいい?ほかの方法はない?」と問いかけることで、顧客のために「もう一工夫」が生まれるように気を配ります。
外国人技能実習生を一人前にして帰す
現在は11名のうち3名がベトナム人技能実習生です。採用にあたり、私も現地のハノイに行って面接しますが、3名ともよく育ってくれました。
弊社では手作業でノウハウや技術がいる仕事が多いので、単純作業の繰り返しではありません。
きちんと手に職をつけてもらい、帰国後に「食いっぱぐれ」ないように一人前にして帰すのが信条です。
腕とやる気を自社ブランド「鍛冶屋の頓珍漢」に生かす
日本人の職人は、昔から働いてくれている人ばかりです。
弊社の加工は機械での加工だけでなく、手作業で職人の勘や経験が必要なことも多く、簡単そうに見えて難しく、誰もができる作業だけではありません。
皆自分では、できて当たり前だと思っていますが…。
腕とやる気をプロデュース
だから在籍しているのは、腕とやる気がある人ばかりです。
その腕とやる気をうまくプロデュースして、自社ブランド「鍛冶屋の頓珍漢」を始めとする新規事業にも生かしていくことが、私の仕事なのではないかと思います。
教科書とは違う学びを得るべく10代で海外へ
中学を卒業後は、広い世界を見るために、1人でカナダの高校へ行きました。
勉強して、日本の高校受験と大学受験を経験して…という、みんなと同じ生き方ではなく、「教科書とは違う勉強がしたい」と思っていました。
いま思えば、当時から考え方がロックだったんですね(笑)。
海外の生活で知った孤独、経験と学び
英語で世界中の人と話したいという気持ちがありましたが、現実は友達や知り合いがいない、スマホもない、誰とも話せない。
箸を使っていたら「アジア人がいる」と笑われるような時代で、からかわれたり嫌がらせをされたりして孤独でした。
時々バスでテレカを買いに街まで行き、家族に電話しました。
ただ、そんな環境だからこそローカライズされ、英語も話せるようになったし、海外で自分で生活するという経験と学びを得ることができたと思います。
アメリカで日系楽器メーカーを経て帰国
アメリカのアリゾナ州立大学に進学し卒業。ミュージシャンとして活動しながら、レコーディングエンジニアを経て、現地の日系の楽器メーカーに就職しました。
アーティストリレーションを担当したり、現地法人を立ち上げたりして、5年ほど働いていたところ、父親から「帰ってこないか」と連絡があったんです。
それまではアメリカに永住するつもりでいましたが、自分は16年も親と離れて暮らして、何一つ親に恩を返していないなと。
逆に、今から自分が日本に適応できるかな?という不安もありましたが、親孝行したいという気持ちで、31歳の時に帰国しました。
自社ブランドで製造業のビジネスモデルから脱却を
帰国後、セイコーに入社しましたが、最初は何も知らず「どうしようかな」と。
ただ、「やるからには面白いことをしたい」と思ったのもこの時でした。
「お客さんの図面だけを作っていても面白くない。
これまでクリエイティブなことをしてきたのだから、ここでも世の中にないものを作って、誰かを喜ばせよう」と思ったんです。
「良いもの」は決して安くない
材料が高騰しても予算は削られるなど、製造業には「安ければいい」と「安くてもいい」という考えが広まって当たり前になってしまっています。
でも、実際には「良いもの」は決して安くないですよね。
また、金属加工業界にも様々なベンチャー企業が参入してきていますが、結局は技術のある町工場を買い叩いていると感じていました。
私は、製造業の既存のビジネスモデルから脱却してチャレンジしないと、生き残っていけないと考えていました。
良し悪しがわかるお客様と自社ブランドを作り育てる
そこで、ものの良し悪しがわかるお客さんに向けて自社ブランドを作って、一緒に育てよう。
そんな思いから2020年の夏、自社ブランド製品の製作を発案しました。
幸い、社長も「新しいことにどんどんチャレンジしていくべき」という考え方だったので、応援してくれました。
実際のところ、社長自身が時にスタイルを変えながら、時代に合ったことに挑戦してきた人でしたから。
アメリカで商社に在籍した時、商品開発も担当しましたが、「既存のパーツを使うことが前提」であったり、「自社で完パケにできないので製品化に時間がかかる」という縛りがあったりで夢がないと感じていました。
ネットを介した直接販売の強み
しかし、弊社のような会社であればロットを気にせず、テストベースから製造できます。
極端な話、まず1つ作って販売し、売れたらまた作ればいいし、売れなければやめることができます。
テスト販売ができる枠組みがあるので、面白い思いつきがあればすぐに行動に移して、自社で完パケできるのが強みです。
また、自分たちで決めたBtoCの単価であれば、自分たちもお客さんも嬉しいものです。
インターネットを介した直接販売の強みですね。
フリマサイトの「瓦鉄板」販売から得た気づき
たまたま、アウトドアをしているお客さんがいて、キャンプ用品を受注した経験がありました。
その経験から、初めは端材で鉄板を作ることにしました。
丸い筒を切断した端材でできる、瓦のような形の鉄板を、フリマサイト「メルカリ」で「瓦鉄板」として800円ほどで販売してみたんです。
するとすぐ売れたので、ニーズがあり、「これはいけるかも」と直感しました。
発想を転換しただけで、0円の端材が800円になることも新鮮に感じました。
職人が仕上げるニッチ向けブランド「鍛冶屋の頓珍漢」
板金メーカーである私たちは、鉄板で焼いた肉がおいしいことをよく知っていました。
そこで、本格的にどんな製品で勝負するかを考えました。
ニッチなソロキャンパー向けにミガキ鉄板を企画
そして「どうせ作るなら、ソロキャンパーに向けた小さな高級鉄板を作ろう。コストや手間を省いた黒皮鉄板ではなく、鉄板焼き屋さんで使われているような、熱伝導率の高いミガキ鉄板だ!」と思い付きました。
できるだけ荷物を減らしたいソロキャンパーでも、アウトドアで肉をおいしく焼いて食べたいはず。そんな商品があったら喜ばれるのではという、ニッチ需要に向けたアイデアでした。
※鍛冶屋の頓珍漢Webサイトリンク
ブランド・アイデンティティは専務と社長から
アウトドア用品としては意外な「鍛冶屋の頓珍漢」という名前を決めたのは専務です。
「うちは鍛冶屋でトンチンカンという音が響いているし、トンチンカンなことをやるから」というので、面白いと思って決定しました。
ロゴの文字は、書道をしている社長が書いています。
SNSで「鍛冶屋の頓珍漢」ファンの存在を実感
ネットの直接販売において、SNSの必要性を感じていました。
「鍛冶屋の頓珍漢」ブランドの立ち上げと同時に、すぐにインスタグラムを開始しました。2020年の夏からはツイッターも始めています。
ツイッターに新製品の情報を載せると、その瞬間に売れることもあり、確実に自社の「ファン」がいることが実感できます。
また、ツイッターでは「この商品をどう思いますか?」と、新製品のアンケートを取ることもあります。
ニッチを狙ったミガキ鉄板がYouTubeからブレイク
いざ始めてみたミガキ鉄板ですが、磨きに手がかかりすぎるので、正直あまり利益はないので「しまった」と後悔したほど(笑)。
でもその手をかけた分、ユーザーさんが鉄板を育てる気持ちで「錆びないように」と大事に扱ってくれるので、ブランドも育ってくれました。
ECサイトで本格的に販売しようと、Yahoo!とAmazonで販売を開始しました。
そうして「ミガキ鉄板のZ152がよく売れるな」と感じていたある時、お客さんから「セイコーさんのところの鉄板、ユーチューバーが使っているのを見たよ」と聞きました。
キャンプ飯情報YouTuberがステーキ用にミガキ鉄板を取り上げる
キャンプ飯を配信するユーチューバー「アルファテック」さんが、ステーキを焼くために、ソロキャンプ用のミガキ鉄板Z152を購入して、使ってくれていたんです。
そのおかげで、自社では全く宣伝をしていないのに、ECサイトでどんどん売れるようになりました。
それからは、アウトドアで焼き鳥をするための網「焼き鳥アミーゴ」を考案すると、それもよく売れていきました。
アルミ素材の飯盒「メスティン」に収納できる、
ソロキャンパー需要を捉えて、一宮市の会社に焙煎を依頼したオリジナルコーヒー「アウトドアブレンドドリップパック」や、新製品として人気が出てきたポケットストーブに収納できるミニアルコールストーブも、リリースしています。
お客様からの声に応えアイデアも吸い上げる
これまでも、「サイズ違いの製品を作って」というような、個別のオーダーに応えることで、ニーズにマッチする商品を生み出してきました。
逆にお客さんの特注品からアイデアを得ることもあり、「お客さんに通常の特注よりお安く販売する代わりに、これを量産してもいいですか?」と聞いて、商品化したこともあります。
お客さん側も、「自分のアイデアが採用されるのは嬉しい」と喜んでくれていますよ。
自己満足で終わらず新しいニーズとのマッチを
製造業は、自己満足で終わってはダメです。
新しい市場のマーケティングをしながら、ニーズとマッチさせていかなければ。
例えばいきなり無名のブランドがアウトドア用の焚き火台を作ったとしても、大手メーカーの人気製品が多々ある中で、売れるのはほぼ不可能です。
だから、他社製品にはないプラスアルファと、ありそうでない製品作りからはじめました。
私たちはユーザーを大事にしています。
宣伝をしないのにファンになってついてきてくれるのは、このおかげかもしれません。
令和4年の年始は、注文が入ったら毎日発送していたので、元旦も会社に出てきて出荷していました。
正月返上でしたが、「買ってくれたお客さんは、すぐに使いたいだろうな」と、届いて喜んでくれる人の顔を想像していました。
通常、製造業はお店が閉まっていたら売り上げがないはずなのに、今は日時を問わず買ってもらえる。これには感謝ですね。
地に足をつけた本業と新事業で、日本ブランドの再生を
「鍛冶屋の頓珍漢」の売り上げは、会社全体の15〜20%ほどですが、見積もりもいらないし、休日でも自動的に売れますから、利益率は高いんじゃないかと思います。
小牧市のふるさと納税の返礼品にも選んでもらっているので、本業の広告塔としての役割もあると思います。
本業と「鍛冶屋の頓珍漢」はリンクしています。どちらも、自分たちの武器を最大限に使って、マスではなくニッチを追い求めていきたいと思っています。
自分たちのブランド化で高付加価値化を
下請けのままでは、コストカットの話をされてばかりです。
今さら安物売りの適当な仕事はできませんから、自分たちをブランド化していかなければ。
値打ちを上げていくには、自分たちで高い付加価値をつけていくしかありません。
これからもニッチ分野に注力
私たちはこれからも、ニッチに仕事をしていきたいと思います。
地域の人や個人企業などを問わず、「壊れたところをちょっと直して欲しい」「ここに手すりをつけて欲しい」というような要望に対して、お役に立てる存在でありたいですね。
最近では、今まで海外に発注していた製品をセイコーに依頼していただき、「品質が良かったから」といって、リピートしていただくこともあります。
海外への発注と比べると、クオリティはもちろんですが、万が一行き違いがあった時の対応に違いが出ると思います。
海外とのやりとりにはストレスやお金が付いて回りますが、弊社にはいつでも打ち合わせに来てもらえるし、日本製というブランド力も付いてきます。
また、海外では試作から製品化まで3カ月かかるものを、弊社が2週間で製品化したこともあります。それらを全部含めて品質と見合わせると、価値があることがわかってもらえるようで、嬉しいですね。
一日一日、地に足をつけて仕事を
今後は、企業のオリジナル商品のOEMへの対応や、自社製品の海外への逆輸入も考えています。
もちろん、「鍛冶屋の頓珍漢」の新商品の計画も進んでいます。
一日一日、地に足をつけて仕事をする中で、なくなりつつある「日本ブランド」を、私たちが再生していきたいですね。
【会社所在地】
小牧市三ツ渕原新田433番地
【コーポレートサイトURL &鍛冶屋の頓珍漢 YouTubeチャンネル】
【代表者】
代表取締役 村下 正樹(2022年10月より)
【事業内容】
車輌、航空機、建築、遊戯用金属製品の加工及び施工(ステンレス、スチール、アルミ、銅、真鍮、 チタン)
【資本金】
1,200 万円
(インタビュー&スクリプト:倉畑桐子)
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